家族のありかたを問う

-離婚した元妻とその妻の今のボーイフレンドとその連れ子と,自分の子どもと、自分の母親と母親の新しい夫との間の養子の子どもも一緒に週末に食事をする

あなたやあなたの周りにこんな家族の形があったらどう思いますか.

周りの目を気にしますか?デンマークの家族のあり方は,生物学的なつながりのある家族(つまり“血のつながり”のある家族)を重視する傾向が強い日本人には衝撃的かもしれません.

 

“法律上の関係”にとらわれない

まず家族の最初の形態である“カップル/パートナー関係”(同性・異性問わず)について言うと,デンマーク人は付き合っている相手を早々に家族に紹介します.家族に会わせるのは結婚を前提というのは昔の話.彼らは間もなく一緒に暮らし始めます.この同棲は必ずしも結婚を見据えたものではなく,一緒に住んで相性を見極めるというもっとライトなもの.この同棲の期間に子どもを設けることも少なくありません.つまり婚外子が多く存在します.

カップル同士でも同棲を数年していれば夫婦として大方の権利を与えられます.女性が経済的に自立し,出産後に職場復帰できる環境,整った産休・育休制度,養育費や教育費は国や自治体によって十分サポートされる為,子どもができた時に結婚という形で責任をとるという感覚や,夫が家族を養うという必要がありません.

さらに,子どもは法律的な夫婦という“外見上の”関係の元でのみ健やかに育つと考えている人は少なく,それよりも本質的な意味でよりよい関係や環境を選択することの方を重視している文化なのも理由の一つのように思います.ちなみにデンマークは世界初の同性カップルの登録パートナーシップ法を成立し,今では同性カップルが養子を迎えることも可能です.

 

一人ひとりが自分で考え選択し責任をもつ

彼らは誰が誰の夫だとか,誰が誰との間の血縁的つながりのある子どもだとかということを正確に把握して関わろうとしていないように見えます.日本人からすると“モラル”とか“秩序”が崩壊して混乱しそうな気がします.さらに言うと,国外から養子を迎えて自分とは肌の色の違うきょうだいがいることもあります.

そんな中で子どもは他の友達の中で肩身の狭い思いをしたり心が不安定になったりするのではないかと思えるかもしれません.でも友達も同じように“異種混合家族”だとしたらそんな思いをすることはあまりないでしょう.もちろん離婚したカップルの間の子ども、そして自分が養子として迎えられたことを知った子どもと家族の間に課題があることも聞きます.同性同士のカップルの間の子どもは異性の親の愛情が受けられないという意見もあります.デンマーク人は,夫婦とはこういうものとか,子どもはこういう環境で育つべきものとか,よりよい家族とはこういうものといったいわゆる“固定観念”をもつよりも,自分達が心地よく安心できる人と一緒に関係を築くことを大事にしているようです.

自由,だから少子化を食い止めている!?

家族の形態が自由である故に離婚や再婚も多いのも現状です.ただそれを日本人のようにネガティブに捉えている印象は受けません.ひとり親という言い方もあまり聞きません.日本のように両親が離婚したら子どもはどちらかの親の親権に移り引き取られて片方の親に時々でしか会えないということはデンマークでは起きません.1週間おきにそれぞれの親の家を移動するのです.『先週はパパと過ごしたから,今週はママの家に行く…』という感じで.わたしの上司も『今週は娘がいるから家で仕事をする.』とよく言っています.

 

日本人からしたら違和感のある家族形態であったとしても,デンマーク人は世間体や固定観念にとらわれず,自分と家族が満足して幸せに暮らす方法をただ純粋に選択しているだけのように思います.そして子どもを育てやすい環境を作るには,国が親が子育てと仕事のバランスをとりやすい環境を整え,充実した社会保障を提供することであり,それが国の発展に重要であることを国民一人ひとりが考えて選択したのだと思います.世界保健機構(WHO)の2014年の統計発表によるとデンマークの特殊出生率は1.9で1980年代から上昇しています.さらに国外からの養子縁組も推奨しているとなれば,この国がかつての観念を変え新しい道を選択したことは一定の結果をおさめていると言えます.

 

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